Vol.199
エディター・デザイナー 渡部サトさん


SATO WATANABE
PROFILE
わたなべ さと●1971年いわき市生まれ。短大で服飾美術を学び、専門学校へ。編集の知識も習得し、編集プロダクションに勤務。数々の雑誌制作に関わる。28歳でフリーランスに。料理や洋裁の書籍やムックの編集も手がける。おととし服飾美術の知識を生かしデザイナーとしてもデビュー。本名は坂本敦子さん。





小紋の生地を生かしたスモッグ風のブラウス。


デザイン中のサトさん。思いつくまま描いたデザインが実際作品になっているそう




}和布素材のグラニーバッグ。フリルがかわいらしい作品

}ファーと着物地の斬新な組み合わせリュック。異素材同士が楽しく、かといって奇抜でもない。これも「サト流」デザイン

これまでに発行した主な著者本。
●「きものリフォームnewスタイルブック」/永岡書店 1,200円 ●「直線縫いでざくざくできるスカート」/河出書房新社 1,200円 ●「古裂のバッグ」/河出書房新社 1,400円 ●「ウエストゴムの形いろいろキレイめスカート」/河出書房新社 1,200円          

※有名書店で取扱中

あくまで手作り派
イワキジェンヌ・
渡部サトさんの創る世界

 「古裂」と書いて「こぎれ」と呼ぶ。いわゆる古い布、和布のはし切れを指す言葉である。そんな古裂を使って洋服やバッグをデザイン。著書も次々に出版しているのがいわき市出身、東京在住の渡部サトさんだ。「シンプルでいて個性が光る」彼女のデザインのインスピレーションはどこからくるのかお話を伺った。

着たいものをかたちにそれがデザイン信条

 タンスに眠っている着物を捨てるのではなく、ほどいて洋服や小物にしたり、バッグに作り替えたりする着物のリフォーム術が最近、話題を集めている。書店でも関連本を多く見かけるようになった。
 渡部サトさんも、そんなリフォームの著書を手がけ、デザイナーとして活躍しているひとりだ。つむぎ、ちりめん、小紋、紗など素材もさることながら、着物地の魅力は、その絵柄にあると彼女は語る。大胆な絵柄の男物の羽裏でさえ、彼女の手にかかれば小粋なワンピースに変わっ
てしまう。遊べる柄は隠さずにあえて出していくのだ。
「着物を新しいデザインに変えることはとても楽しいですね。でも私はあえて1枚のテキスタイル(布地)として捉え、自由な発想でデザインをしています」
 彼女の本を開けば、その自由な発想が何なのかわかる。着物地にスエードが斬新なバッグ、ファーと和布のリュックサック、小紋のスモッグ風のブラウス、10枚はぎのスカートなど…。シンプルでありながらそれでいて、ちょっと凝っている。
「この色、素材ならこれ!ボタンはここに、レース、ビーズ、ベルト…自分が着たいもの、持ちたいものをと形にするだけ。作品の多くはひらめきによるものかもしれませんね」

手作りの師匠は祖母のサトさん

 渡部サト。実は彼女の本名ではない。著者として本を初めて発行した時、デザイナー名として祖母の名前からとったものだそうだ。  
 子どもの頃から病弱だった彼女は学校の他は家にいることも多く、祖母のサトさんと過ごしながらいろいろなことを学んだ。アイロン掛けやハンカチの干し方、手芸や洋裁の基礎もこの頃には身に付いていた。家庭科の授業では彼女の玉止めが見本になったほどだ。
「思えば、祖母が私の手作りの師匠ですね。初の作品は、小学校低学年の時に作った、花模様の手縫いのポーチでした」 
 高校卒業後、彼女は服飾系の短大に進み、服飾美術を学ぶ。
「プレスを目指していました。専門知識を身につけるために短大卒業後に専門学校へ通い、編集委員を任されたことから編集の世界に興味を持ったんです」
 その後、編集プロダクションに就職し、インテリア・料理・手芸などさまざまな分野の編集に携わってきた。28歳でフリーランスになり、翌年、自ら企画したカフェの本が出版されることになった。
「自分の考えたことが形になる…これが私のやりたかったことだ!」
 そして2年後、いよいよデザイナーとしてデビューし、初の著書を出版。活動の幅は大きく広がった。

編集者としてデザイナーとして

 現在、編集を同時に何本か抱える忙しい毎日を過ごしている。1冊の本を仕上げるまで、企画から編集、レイアウト、スタイリングなどサトさんが休むヒマはない。「仕事イコール趣味。普通4〜5カ月かかる本を2カ月で仕上げたこともありましたよ(笑)」
 3月に発行する型紙つきスカートの本で、著作は5冊目を数える。本のプロフィールに目が止まった。自らを『イワキジェンヌ』と紹介している。
 そんな故郷を愛する彼女が、この地で初めての作品展を開くことになった。彼女が今までに作ってきた作品180点以上の中から100点ほどを出展。どれ一つとして同じものはそこにはない。
 安価の既製品が大量に生産される今、個性という点で服装は画一化されているように感じる。古き伝統を取り入れて、新しいスタイルを創り出す…まさに温故知新。
 祖母のサトさんから譲り受けたものは、名前だけではない何かであると信じている。(高木)


■バックナンバー
2004年6月号 いわきマジシャンズクラブ/鈴木清友さん
2004年7月号 明道賛家 コーヒー道師範/神場 明久さん
2004年10月号 川島工房/川島 力 さん
2004年11月号 いわき食介護研究会
2004年12月号 気鋭の料理人たち
2005年1月号 百席の会/古川隆 さん

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