子どもの可能性を信じ、諦めない姿勢
発達障がい児の指導をライフワークとして |
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発達障がい児のための
プログラムとの出会い |
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平日午後3時を過ぎた頃、子ども達が次々に学習塾に集まってくる。ある子は待ちきれない様子で小走りに、ある子はこの塾の看板犬・ルイ君に声をかけながら。どの子にも「これから勉強」という義務感はまったくなく、むしろこの場所に来ることがうれしくてたまらないという感じだ。「キッズハウス」…ここに通う生徒たちの多くは何らかの障がいを持つ。自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群・ADHD(注意欠陥多動障がい)・LD(学習障がい)など、いわゆる発達障がいを持っている。そのため指導は個室でのマンツーマン。気をそらされることもなく、ゆったりとした環境で集中して勉強や行動療法に取り組むことができる。
塾長の玉根洋子先生が障がい児指導の仕事を始めたのはおよそ15年前、市内の母子通園施設に勤めていたときだった。当時は栄養指導を専門に行っていたが、障がいを持つ子どもたちと触れ合う機会も多く、どのように指導をしたらいいのか、頭を悩ませていた。そんな時、発達障がい児対象の行動療法である「ポーテージ指導」を知った。家族と共に取り組むプログラムは具体的でわかりやすく、その素晴らしさに衝撃を受け一念発起。指導資格初級、中級を経て、ついに福島県に唯一のポーテージ認定指導員の資格を取得した。その後も、このプログラムを通じて、より多くの子どもたちの役に立ちたい、という思いが募り、平成10年にポーテージ協会小名浜支部と小名浜支部内富岡教室を開設、同時に発達支援学習塾キッズハウスと通常進学学習塾キッズハウスを一気に立ち上げた。 |
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↑学習指導ではなく、他人とのやりとりや円滑なコミュニケーションのとり方を学ぶサークル活動。年齢や学年を考慮し、5つのグループに分けて実践している
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6年間かけて指導し
ついに言葉を引き出して |
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現在80名ほどの生徒が在籍するキッズハウス。発達障がい児は一人ひとりの症状が大きく異なるため、その指導にもきめ細やかな分析と対策が不可欠となる。機嫌が悪くなってしまうと体全体で全てを拒否し、固まってピクリとも動かなくなってしまう子、勉強が苦痛で鉛筆を真っ二つに折り続けることで怒りを表す子。その表現もまさに千差万別。時には自分の無力さを感じ、思わず涙が流れることもある。そんな時に思い出して勇気づけられるエピソードがある。言葉が話せない、ある発達障害を持つ子どもがキッズハウスに入塾した。別の相談機関で「この子は一生言葉を発しないでしょう」と診断され半ば諦めていた子だった。玉根さんは根気良く指導を続け、ついに言葉を引き出した。費やした年月は6年間。それだけに言葉を聞いた時の喜びもひとしおだった。10回涙を流しても、その中にただ1回でも喜びの涙があれば、ほかの9回は次へのステップとして生かすことができる。この芯の強さに子どもたちもその親も惹かれるのかもしれない。「でもね、今でも初めてのお子さんとの出会いの場は、楽しみな部分もあるけれど、とても緊張するんですよ」と意外な一面も見せてくれた。 |
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↑キッズハウスの看板犬の『ルイ』君。訪れる人の癒しはもちろん、なかなかなじめない子どもの心を開く役目を担っている
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障がいは周りの理解と支援で
個性として輝く |
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「発達に遅れや偏りのある子どもを支えるには、三つの方向からのアプローチがなければいけない」と彼女は強く主張する。すなわち親、療育、そして医療である。この三つのうちどれが欠けても土台としては成り立たず、傾いてしまうというのだ。彼女自身は医療の専門家ではないため、いくら求められてもできないことがたくさんある。だから三者がお互いに連携をとり、歩みを揃えて取り組まなければならないと信じ、実践している。
初めてポーテージプログラムで指導した子どもが現在高校一年生。以来これといって宣伝をしなかったにもかかわらず、生徒の数は口コミで増えた。一度相談に訪れた生徒はほとんどがそのまま入会し、高校生になっても在籍し続ける。そのため新しい生徒を受け入れる余裕がなかなかないそうだ。これを解決するためにも、もっともっとたくさんの若い人材に障がい児教育という道を選んでほしいと彼女は願い、その育成にも力を入れている。彼女の理念を受け継ぐ第二、第三のキッズハウスが誕生するのも、そう遠い未来のことではないかもしれない。 |
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↑小名浜支所より徒歩1分。ピンクの看板が目印 |
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