人と人、人と物の出会いを大切にしたい
きっとそこから始まることがあるから |
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■様々な個性が集まる小さな雑貨店
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いわき駅から少し離れた裏通りにその店はある。一歩足を踏み入れると、心地よい音楽と温かい灯りに包まれる。所狭しと雑貨や手作りの小物が並び、ワクワクするような非日常へと誘われる。
〈アルマレアル〉は、素人の作家が作った作品を委託販売という形で展示・販売する雑貨店。学生から主婦、退職して第２の人生を楽しむ人など、多種多彩な作家から個性的な作品が持ち寄られる。販売価格も作家自身が設定し、売り上げの30％が委託販売手数料となる。
オーナーの田村英之さんは、都内の大学を卒業して数年後、祖父の代から続く〈田村無線電機〉の3代目として店を手伝った。元々モノ作りが好きで、手先が器用だったため、アンテナやエアコンを設置するという仕事にやりがいを感じた。そんな中で、各家庭に配達で出向いた際に、趣味で物作りを楽しむ人が多い事に気が付いた。どれも売り物にしてもおかしくないような作品ばかり。「気軽に自分の作品を展示できる店があったら面白いのに」。漠然とそんな思いを膨らませていった。
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↑almareal
いわき市平字一町目47
tel25-0635
営11:00〜20:00
http://www.almareal.com |
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■模索する日々の中から自分らしさへの確立
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「資格も経験もない自分にできる事、自分にしかできない事は何か」。日々模索していたある日、運転中にパッと今のスタイルの店のイメージが沸いた。「世代や年齢、性別を超えた価値観の交流の場を作りたい」。幼少の頃から消極的。余程のことがない限り自分から行動できないタイプだったが、そのひらめきに対しては自信を持って進もうと思えたのだ。周囲を説得し、試行錯誤しながらの準備期間を経て、2002年、電気店の一角に〈アルマレアル〉を立ち上げた。
開店当初、作品を展示する作家はゼロ。まずはこの店らしい物をと、フェアトレード（途上国と公正な取引をして現地の人々の暮らしを支える仕組み）の輸入雑貨を取り入れることにした。その後、徐々にだが、口コミで店の評判が広がり参加してくれる作家が集まるようになった。
約2年間は電気店との両立をしていたが、大型家電店が増え、地域の家電店は弱い立場へと追い込まれた。長年愛され続けてきた店をたたむ事は苦渋の決断だったが、時代の流れには逆らえないと50年以上続く歴史に幕を閉じた。
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| ■出会いを通して広がる新しい世界 |
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開店して間もない頃、知人から禅語「我逢人」という言葉を贈られた。その時は意味がわからなかったが、この店を通して出会いの尊さに気づくことができた。この店には様々な人が訪れる。フラリと立ち寄る人、自分のお気に入りを熱心に探す人、おしゃべりを楽しみに来る人…。その出会いから自分の世界が広がった。 彼にとっての喜びは、作り手と買い手を結んでいると実感できる事。学生が作った小物をサラリーマンが真剣に眺め、年配の方が作ったものを女の子が楽しそうに選ぶ光景を間近で見られることが幸せだという。そして、作品を持ち寄ってくれた作家が、別の場所や分野で活躍している姿を見ることが嬉しいと語ってくれた。
もうひとつの大切な出会いが、ディジュリドゥというオーストラリアの民族楽器。自然からできた唯一無二のもので、自分の気持ちが反映されてしまうこともあるという不思議な楽器だ。独特の呼吸法を使い、大地を揺さぶるような響きが奏でられる。この楽器を通して学ぶことも多く、出会いの輪も広がった。この素晴らしさを伝えたいと、店でも販売し、サークル活動や音楽活動も積極的に行っている。
「一人で考えて一人で行動していては見つからないものがある。色々な出会いからたくさんの事を学び、自分自身が成長してこれたんです」。
この店は、作家やお客さん、様々な価値観が交わって作り上げられてきた。自分らしさという個性が集まって、また新しい何かが生まれてゆく。つまらないと感じる日常にも、出会いやひらめきから無数の世界が広がるかもしれない。そんな希望に背中を押してもらえたような気がした。
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| ↑シロアリが食べて空洞になった木材を使用して作られた楽器ディジュリドゥ。田村さんにとって、「友達であり、先生のような存在」という。現在、毎週日曜日に店の2階でサークルを開催している。 |
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