vol.233 ふれあいサポートいわき
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PROFILE |
いわきふれあいサポート
平成14年11月28日設立。いわき市女性相談員を支援し、DV等の侵害を受けている被害女性への支援を行う市民団体。心のケア並びに、生活自立支援活動を中心に行う。会員、有志より不要な電化製品や生活用品の寄付を募り、生活必要品の提供を展開。平成16年事務所設立。電話相談事業、シェルター事業開始。。 |
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DVに悩む女性たちを物心両面から支援し25年 |
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■戦後間もない時代女性の人権運動に共鳴 |
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平の街なかにある一室。電話とパソコンと事務机が置かれ、その奥には寝具や電化製品、衣類などが並んでいた。ここが「いわきふれあいサポート」の事務局。水曜日は相談の日のため、午後6時からは会員が作業をしながら電話を待つ。会長を務める黒須敦子さんは昭和6年いわき生まれ。磐城女子高校卒業後、日本女子大学に進学。その頃廃娼問題に取り組んだ女性運動家・久布白落実(くぶしろおちみ)の街頭演説を聞いた。「国の施策として性を売らされている女性の人権を無視した公娼制度は撤廃するべきだ」と訴えるその姿を見て、体が震えた。戦後間もない時代、娼婦が職業として存在し、女性自身も黙認しており、そのことに対しての矛盾があった。そんな風潮の中で女性の人権を訴える姿に共感を覚えた黒須さんは、久布白氏が会頭を務める基督教婦人矯風会に入会し、活動を行った。やがて運動家たちの努力が実を結び、昭和31年に売春防止法が施行された。卒業後は福島県職員として県内各地に勤務。その間、公私共、長年に渡り女性福祉のために尽くした功績が認められ、今年5月には県知事より「社会福祉功労賞」を受賞。女性福祉だけにとどまらず、障害、高齢者・女性・児童等の施設の理事、福島県運営適正化委員会委員長など複数の役職を持ち、幅広く活動している。
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電話相談や様々な手続きや作業のために事務所に集まったメンバーの皆さん |
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■世界女性会議後DV防止法が施行される |
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かつては夫が妻に暴力をふるっても「夫婦喧嘩」とみなされ、警察に訴えてもとりあってはもらえなかった。しかし平成7年、北京で行われた「第4回世界女性会議」の中で実質的な男女平等の推進とあらゆる分野への女性の全面的参加など38項目から成る「北京宣言」などが採択されて以降、流れが大きく変わった。そして遂に平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者保護に関する法律=DV防止法」が施行されるに至った。長い歴史の中で多くの女性の人権が踏みにじられ、また、一部の人が闘い続けたことが実を結んだのだ。
「いわきふれあいサポート」発足のきっかけは平成11年に遡る。いわき市が中核市に移行すると同時に、県いわき地方振興局に配置されていた婦人相談員が廃止されることになった。危惧を感じた黒須さんグループと女性団体連絡協議会が「市の管轄で女性相談員を設置すること」をいわき市議会に陳情・請願した。その結果、翌年には相談員の配置が承認され、市としては初めての市女性相談員が誕生した。平成14年の夫の暴力に関する相談件数は77件。仮に夫のDVから逃れたとしてもその先には生活、医療、就労、子どもなど切実な問題が山積する。「相談だけでは解決できない部分もあり、そのため。市民サイドの支援組織を作り、物心両面のサポートが必要」と考えた黒須さんは、陳情の際に協力したメンバー22名と共に、平成14年11月「ふれあいサポート」設立に至った。 |
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■緊急時避難事業開始、女性の自立を目標に |
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市の相談窓口への相談件数も年々増え、平成18年の相談件数は831件で、うち夫による暴力が126件だった。「いわきふれあいサポート」設立5年目を迎え、行政や警察との連携の中、DVなどの人権侵害を受けている女性がよりよい生活を送るために支援をしている。被害者の自立のための「生活自立支援」としてアパートへの入居費用、生活困窮時費用、裁判書類費用などの貸し付け、家具・家電・衣類など生活物資の支援が中心だが、今年6月より「いわき市緊急一時保護支援補助金」の決定支給を受け、被害女性とその子ども等を受け入れる事業が始まった。「すべてを会員からの会費、寄付金で運営していますが、こういう問題はなかなか理解されないのが現状です。これからも会に賛同してくれる仲間を増やしていきたいですね。そして暴力を受けた女性が一日でも早い自立をすることを目標に頑張りたいと思います」と黒須さんは話す。
パートナーからの暴力を誰にも言えずに悩んでいたら、ぜひ連絡することを勧めたい。きっと温かい手をさしのべてくれることだろう。 |
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