| vol.227 鈴木 千絵 さん |
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| PROFILE |
すずきちえ ● 昭和57年、いわき市生まれ、現在24歳。平養護学校で小学校から高校までを過ごす。高校3年生の時に日本折り紙協会認定の講師資格を取得。その他、ワープロ検定取得やネイルアートの勉強もするなどとても前向き。現在、出張講習や学校や各種団体での講習も行う。
問い合わせ／33-3092
●ホームページ「折り紙美術館」
http://www.ht-net21.ne.jp/~paper-p/ |
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| 学校での講演活動で命の大切さも伝えたい |
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| ■骨形成不全症と診断病気との闘いが始まる |
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| 初夏のまぶしい日ざしが降り注ぐ5月、千絵さんは産まれた。元気に産声をあげ、ミルクもいっぱい飲んだ。ところがその3日後、容態は急変。なんと骨が5カ所折れていたのだ。その後、医師より「骨形成不全症」と告げられた。それは2万人に一人の発生頻度と言われる治療法のない難病…。骨を作るための機能に異常があるため、骨折し易く、進行性の骨変形が見られ、成長障害などの病状を伴う。母親の珠実さんは目の前が真っ暗になり、途方に暮れた。周囲に受け入れてもらえず、偏見の目で見られた。しかも仕事をしながらの千絵さんの介助は並大抵のことではなかった。精神的にも追いつめられた珠実さんは「この子と一緒に死のう」と車を海に向けて走らせた。黙って運転する母に千絵さんも何かを感じ取ったのだろうか。「お母さん、私、死にたくない」その声ではっと目がさめた。「この子はこんな身体なのに一生懸命生きようとしている。それなのに、私は…」以来、共に病気と闘っていこうと心に誓った。 |
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| ■進学を断念し折り紙講師の資格を取得 |
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千絵さんは養護学校に入学し、高校までを過ごした。そこには様々な障がいを持つ子どもたちが通っていた。しかし中学1年の時、ひどいいじめに遭い、登校拒否寸前までに追いつめられた。そんな時、小学校時代の恩師が勧めてくれたのが折り紙だった。「折り紙を一心不乱に折っている時は、いやなことを考えないですむから」最初はそんな気持ちで没頭していたが、一枚の紙に手を加えるだけでいろいろな姿に変化するその様に、奥の深さを感じ始めていた。中学3年の時に、同じ病気に悩む「骨形成不全友の会」の存在を知り、すぐに入会した。「同じ障がいの子を持つ親同士分かり合えることがたくさんあり、また相談もでき、なぜもっと早く入らなかったか後悔しました」と珠実さん。以来、親交は続いている。
高校では商業科に進み、将来はパソコンを生かした職業に就くべく、コンピュータの専門学校への進学を希望した。しかし四倉から泉までの毎日の通学は体力的に難しい。結局進学は断念し、折り紙講師の資格を取得し、本格的に仕事にしていく道を選んだ。「日本折り紙認定講師」の試験は18歳にならないと受けられない。試験は基本から応用までの50点を制作し、一点一点を厳しくチェックされる。例えば「鶴は空を飛ぶので、くちばしを下げてはいけない」などの決まり事があり、試験をパスするまで1年間を要した。
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| ↑力作の「ノウセンカズラ」 |
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| ↑深紅の彼岸花。実物を見ながら折り方を考えるそう |
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| ■学校での講演活動を積極的に行う |
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現在は折り紙講師として公民館教室で
教えたり、出張講習をしている千絵さん。一番楽しいのは小・中学校や高校での講習。現在30校余りで実施した。「みなさんは骨折をしたことがありますか？」そんな会話から始まる講演を必ず交え、病気から得た経験の中から、障がい者に対する偏見を無くすこと、命の大切さについてを話す。子どもたちは咳ひとつせず聞き入り、涙するものさえいるという。「今のゲームは死んでもリセットすればまた生き返る、だから子どもたちが考える命の重さが軽くなってしまっています。私のように歩けなくても頑張って生きているということを知ってもらい、目標を持って生きて欲しいのです」と千絵さん。
講習の後は必ずお礼の手紙が送られてくる。「折り紙がこんなに楽しいと思いませんでした」「千絵先生のようにバラを折ってみたいです」そんな言葉が彼女の原動力になる。
作品は花が多い。生花を見ながらパーツを作成していく作業はとても細かく時間がかかる。たんぽぽや福寿草、りんどうや彼岸花…。とても1枚の紙からできたものには思えない質感だ。2年前に個展を開き、多くの方から共感を得た。「また開きたいけどなかなか作品がたまらなくて」。常に骨折の危険にさらされ、抵抗力がないため、風邪をひくとすぐに肺炎になる。しかし千絵さんはひまわりのように明るい笑顔で、ひたむきに生きている。別れ際にバラを折ってくれた。後ろに「chie ?」と小さなサインがあった。辛い時はこれを見て頑張ろう。それが千絵さんとの約束だから…。 |
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| ↑小学校での講習会の後生徒達と撮影 |
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