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vol.80
レストラン シェ栗崎
「フレンチ」
お店DATA
■レストラン シェ栗崎
住所/平南白土2-10-6
電話/0246-21-3363
営業時間/ランチ/12:00〜15:00(13:30 OS)ディナー/18:00〜22:00(20:00 OS)
定休日/毎週月曜、第1・3火曜日
【MENU】
●季節のコース
…2,730円、3,990円、5,040円
●シェフお任せコース…6,300円(要予約)、8,400円(要予約)
●ランチセット Aランチ…1,470円
Bランチ…1,890円
自らが耕す畑で採れる野菜と、競り落とした魚介
こだわりのエッセンスを加えた力のあるフレンチ
■馴染みのないフレンチをいわきに広めたい
まだ朝日の冠が付かない「SALLY」だった誌面に〈Bistro Cordon―Blue〉開店の記事が掲載されている。「フランス料理」がハレの日の高級料理だった頃、記者の私自身も衿を正して取材した記憶が甦ってきた。店の場所は平谷川瀬のテナントビルの1階。八ツ坂トンネルも開通前で、前の通りも一車線だった。オーナーシェフの栗崎透さん(47歳)は当時25歳。いわきの高校を卒業後、東京の大学に進学。アルバイトで勤めたフランス料理店で料理の楽しさを知り、4年への進級を待たずに料理人の道へ飛び込んだ。「いつかはいわきで自分の店を持ちたい」という夢を強く持ちながら、5年間の修行をし、Uターン。昭和62年10月に店をオープンした。20席のこぢんまりとした店内のインテリアはモノトーンで、メニューはコース料理のみ。親近感を持ってもらえるよう、入り口にシェフの似顔絵を大きく描いた看板を掲げた。しかし、いわきではフレンチに馴染みがないのか、お客はなかなか増えなかった。半年後に蓉子さんと結婚、彼女も店のスタッフに加わった。やがて前の道路は二車線化し、フジコシスーパーセンター谷川瀬も開店。周辺はショッピングゾーンとして様変わりし、店の名前も次第に浸透してきた
↑黄色い外観が目印の店。店内には6名まで座れる半個室もあり小パーティにも便利
■店が忙しくなるにつれ 様々な疑問がわいて
5年間営業をし、客数も増え、だんだん手狭になってきた。そこで思い切って、住居と併用した店を郊外に建てることにした。席数は倍の40席、スタッフも7名に増え、ますます店は繁盛した。その反面、シェフは食材に対する疑問を抱くようになった。「日本は世界中の食材が自由に集められる国。そのため季節感や旬に知らず知らずのうちに鈍感になっているのではないか。見回せば地元ではたくさんの食材がある。この地の利を利用し、お客様に本当においしい料理とサービスを提供することができたら…」そんな思いから、平成13年より夫婦二人で営業することに決め、席数を半分に減らし、完全予約制に切り替えた。魚介は店から一番近い漁港の沼之内漁港で、シェフ自らが競り落とす。そして翌年の秋より高久に100坪の畑を借り有機無農薬の野菜作りを始めた。農薬はもちろん化学肥料も使わない。土にはカキ貝、ホッキ貝の殻を燃やして蒔いたり、店の生ゴミを処理して入れる。作物は完熟するまで畑に置くため、その甘さや旨さはスーパーのものとは比べ物にならない。「活きのいい魚をさばくときの手触り、焼いているときの香り、焼き上がった魚の旨さは、言うまでもありません」とシェフは話す。
↑現在は200坪の畑で採れたみずみずしい野菜たち。食べてみれば違いがわかる
↑どのコースにも手作りのデザートがつく。ボリュームがあるが完食する方がほとんど
■店名変更を余儀なくされ シェ栗崎としてスタート
本当に自分たちがやりたかったことを実現し、店も順調に回り始めた平成16年、国際特許事務所より一本の電話が入った。「コルドン・ブルーという名前はオランダの企業に商標権があり、今後使用することはできません」その内容に絶句した。とにかく名前を変えなければならない。1年の猶予期間の間に、畑の近くに店を移転することも視野に入れながら考えたが、結局、名前にシェ(〜さんの店という意味)を付けて〈シェ栗崎〉と変え、今の場所で営業を続けることにした。20年使ってきた名前、自分達でさえ慣れるまでは1年程かかったが、少しずつ定着してきているようだ。
シェフは毎朝6時に起床、7時からの競りに参加し、畑仕事をして店に戻るのを日課としている。また、マダムはワインのスペシャリストとしてソムリエの資格を取得。現在はシニアソムリエにスキルアップし、料理に合うワインをアドバイスしている。プロ向けの勉強会も行い、そこから2人のソムリエが誕生したそうだ。
11月22日まで22周年感謝のフルコース(3、990円)を提供中。「沼之内漁港水揚げ平目のカルパッチョ」には、畑で採れたみずみずしい大根ソースを添えた。また「本日の鮮魚のポアレ韮バターソース」のニラも畑から。2日間じっくりと脂煮しパリッと焼いた「フランス鴨もも肉のコンフィ」も格別のおいしさ。一皿の料理には物語がある。自らの手で育てた野菜、競り落とした魚、そして22年の歴史が凝縮され、テーブルに運ばれる。その料理を口に運んだ時、様々な思いを感じ取ることができるだろう。
↑左からマダムの蓉子さん、シェフの栗崎透さん、シェフのサポート・平子恵さん
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