朝日新聞のコミュニケーション誌「朝日サリー」  

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vol.78
いわきロンポワンの
「天然酵母のパン」
お店DATA
■いわきロンポワン
住所/郷ヶ丘4丁目18-16
電話/0246-68-6105
営業時間/9:00〜19:00
定休日/水曜日
【MENU】
●食パン(11:00焼き上がり)
……1斤200円
●フランスパン(11:30)バケット
……180円
●イギリスパン(12:00)…1斤230円
●天然酵母クロワッサン…100円
●シューパリジャン………100円

天然酵母で本物のパンを作りたい
三代目の強い意志が新生ロンポワンを実現
■小名浜の洋菓子の先駆けショッピングセンターに出店
 皮はカリッとしているのに、中はもちもち。不思議な食感が味わえるのが〈いわきロンポワン〉のフランスパン。自家製の天然酵母を使用しているため、この食感が作り出せる。店の誕生は昭和20年代後半にさかのぼる。戦後の復興の中、創業者の馬目久雄さんが小名浜の和菓子店〈国華堂〉で修行をし、暖簾分けをしてもらい〈国華堂支店〉として開業。当時の小名浜は漁業が盛んで、船がつくたびに商店街は賑わった。特に店のあった下町の中島商店街は、昼夜を問わず人通りがあり、まんじゅうや大福を並べたそばから飛ぶように売れていった。その後、店名を〈馬目商事〉と改名。昭和39年からは二代目の馬目一さんが店を手伝うようになり、パンや洋菓子を商品に加えた。ケーキも主力商品に加わったため、「何か外国をイメージする名前がいい」ということになり、いろいろ考えた末、フランスの公園、ロンポワンが浮かんだ。「公園は人が集まる場所。そうだ、ロンポワンにしよう」それを機に社名も一新し、有限会社いわきロンポワンは新しい一歩を踏み出した。
 昭和40年代になると〈小名浜ショッピングセンター〉が開業し、テナントとして出店。小売りの他、結婚式の引き出物などの卸も行っており、店は至って順調だった。また、当時は洋菓子店も少なかったため、クリスマスシーズンには不眠不休のケーキづくりが続いた。工場にも家にもデコレーションケーキの箱が高く積まれ、クリスマスイヴの日には、それらを一軒一軒配達して廻った。 
↑馬目和則社長(38歳)は毎朝4時から作業を始める。現在10名のスタッフが勤務
■オートメーション化で大規模にパン製造
 小名浜玉川にいわき市民生活協同組合(現在の生活協同組合パルシステム福島)の協同購入の一品としてロンポワンのパンが選ばれた。大量のパンを作るために、製造はすべてオートメーション。「もちろん素材は厳選し、無添加で商品を作っていました。無添加といっても、機械耐性を強くするために、イーストフードも使っていました。いつかは天然酵母で本物のパンを作りたいという夢はありましたね」と話すのは、三代目の馬目和則さん。小さい頃から遊び場は工場の中。パンが焼けるにおいに包まれて育ち、将来家業を継ぐことは彼にとって自然なことだった。高校卒業後、千葉の製粉所直営の工場に就職。オートメーション化のパン製造を1年間経験し、都内の有名店で修行を積んだ。28歳でUターンした時は、小名浜ショッピングセンターが閉店となり、ベーカリーショップも増えてきた。その後も生協が売り上げの8割を占め、事業の中心に据えてきたが、平成19年にパルシステムに統合され、商品の大幅な変更に伴い、ロンポワンの取引は終了となった。
 「工場も機械も老朽化し、メンテナンスにも資金がかかる。このままでは存続も厳しい」と考え、長年思い描いてきた「天然酵母で作る本物のパンの店」を実行に移すことにした。住宅地で動力が使える場所。店は対面販売のカフェスタイル…それは小名浜ショッピングセンターで一番最初に始めた時の形だった。
↑パンとケーキは対面販売となっている。ガラス越しにパンを作る様子が見える
↑テラスもあるブラウンのシックな建物。手前がカフェでイートインも可能だ
■自家製天然酵母を作り からだに優しいパンを
 郷ヶ丘4丁目の今の場所が見つかり、準備を着々と進めた。冒頭でふれた自家製の天然酵母を試行錯誤の上、作り上げた。ライ麦からタネを慎重に起こし、独自の粉の配合で年輪を重ねるように増やしていく。かくしてロンポワン流天然酵母は完成した。それは純白で少し酸っぱい。食パンには1割、フランスパンには2割入れると、不思議な食感のパンができ上がる。特にフランスパンに使うのは粉の他に塩と水のみ。天然酵母を入れるため、通常より柔らかく、扱いが難しくなるが、香ばしく味わいの深いパンに仕上がる。釜の中でパチパチと表面にひびが入る音がする。それを聞くと「今日もおいしいパンができたな」とほっとするそうだ。その他、菓子パンや総菜パンにも力を入れており、粉をこねる以外は全て手作業。泉の紅茶専門店ウェルハースとのコラボレーションの「紅茶のクリームパン(150円)」がおすすめ。日替わりランチには洋食プレートと3種のパンがつき750円。今日も天然酵母の魔法に惹きつけられ、たくさんのお客がロンポワンを訪れる。
↑日替わりランチ(11:30〜14:00)は数量限定で無くなり次第終了。飲物付き

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