朝日新聞のコミュニケーション誌「朝日サリー」  

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vol.75
いわき風月堂の
「なべ焼きプリン」
お店DATA
■いわき風月堂
住所/いわき市中岡町3-7-8
電話/0246-62-3958
営業時間/8:30〜20:00
定休日/火曜日
【MENU】
●田舎かしわ餅……………105円
●観音最中(10ヶ入)…1,260円
●中岡ロール(1本)……1,050円
●中岡ロール(カット)…168円
●中岡シュー……………126円
●もちパイ………………190円

親子二人三脚で生み出す和菓子と洋菓子
ヒット商品誕生にまつわるエピソード
■奥さんの一言から なべ焼きプリンが誕生
 土鍋の中にプリン?意外な組み合わせで人気の商品が中岡町の菓子店にあると聞き、早速訪ねた。
 誕生したのは10年前。二代目店主、大平克弥さん(41歳)の奥さんの「大きなプリンが食べたい」という一言から。初めはどんぶりに入れて店頭に出したところ、思いがけずヒットし、いつしか可愛らしい土鍋に器を変えた。プリンは生クリームをたっぷり使用した、なめらかな食感。鍋の底にはほろ苦いカラメルソース。上にはイチゴ、バナナ、リンゴ、洋ナシなど、色とりどりのフレッシュフルーツ。軽くフランベし、ナパージュでつや出しする。季節によってブドウやメロンが飾られることもある。一日に20個程しか作らないので、売り切れ必至。今年2月のバレンタインシーズンからはチョコレート味も新しく仲間入りした。
 克弥さんは中学、高校と剣道部に所属。厳しい練習にも耐え、数々の記録を残したスポーツマン。高校卒業後、東京の菓子専門学校に進み、就職。4ケ所で修行を積んだ。平成10年にUターンし二代目に。「都会では受け入れられていた自分の菓子がいわきでは通用せず、また、店に洋菓子のイメージがなかったため、いかに代表作を生み出すかを課題に、研究の毎日でした」と過去を振り返る。
↑〈マルト中岡店〉向かい。一見和風だが、中には洋菓子もズラリ並ぶ
■昭和40年に創業 卸売りから小売りへ
 〈いわき風月堂〉は、初代大平勝義さん(70歳)が昭和40年に植田町に開業した。中学卒業後、「手に職を持っていれば食いっぱぐれることはない」という親の強いすすめから、菓子作りの道へ。小名浜や仙台の名店で修行を積んだ。昭和54年に現在の場所に移転。昭和40年後半までの中岡町は、畑一面で何もなかった。50年頃から区画整理などが始まり、〈スーパーマルト)も開店したりと、町に活気がでてきた。創業当時は商店や八百屋などに卸売りするだけだったが、数年後には店頭販売に切り替えた。商品は饅頭やどらやきなど和菓子専門に製造。中でもロングラン商品となっているのが「観音最中」と「田舎かしわ餅」。「観音最中」は高倉町にある高蔵寺の住職が命名してくれた銘菓である。皮に都道府県指定重要文化財、三重塔が描かれていて、中身は自家製の粒アンに栗、白アンにしそ入りとお茶うけにピッタリな和菓子だ。
↑紅白の柏餅は今だけの期間限定。右は高蔵寺がモデルになった観音最中
↑おつかいものに人気の「中岡ロール」。写真はハーフサイズ(525円)
■おいしさの秘密は 誠実さと愛情から
 創業時から、家族だけで店を守ってきた。7歳の息子さんも学校から帰宅すると厨房内で手伝っている。
 店の商品は約30種類以上。和菓子は勝義さん、洋菓子は克弥さんの担当。それぞれ一人だけで作ることは大変な作業。今の季節、端午の節句を前に、3色のかしわ餅は飛ぶように売れる。勝義さんは取材中も休むことなくリズミカルな手付きで餅にアンを詰め続けていた。「お元気の秘訣は何ですか」と尋ねると、「くよくよしないことかな。どんなに忙しくても家族が仲良く、笑顔で暮らせているので幸せです」とニッコリ。
 店には口コミで広がった人気商品がたくさんある。「中岡ロール」はふんわりとしたスポンジにモチモチとしたシュー皮を敷き、なめらかなカスタードクリームを巻いた上品なロールケーキ。一度食べたら病みつきになる味わい。シュークリームのシュー皮にロスが出て、もったいないから薄くのばして焼いたことから誕生。材料にもこだわりを持ち、卵は毎日産みたてが届く。フルーツも信頼している業者から、その日使う分だけを仕入れている。また、砂糖に代わる天然の糖質、トレハロースを使用し、素材本来の味を引き出している。
 近年、材料費が高騰し、仕入れも厳しい状態だが商品の値上げは一切していないという。「値段を上げることでいつも楽しみに来てくれるお客さんに対し、何だか悪くて。食べてもらえなくなるのも寂しいので」。商品は決してユニークなだけで人気があるわけではない。菓子づくりに妥協せず、基本を忠実に守り続けているからこそ出せる味なのだろう。  
 伝統を受け継ぐ和菓子職人、基本を大切にしながらもアイデアマンの洋菓子職人。「お菓子とお客様に対していつも誠実でありたい」そう語る二人。老舗という看板に奢ることなく、日々真剣に取り組む姿と、家族を大切にする気持ちがそこにあった。
↑お気に入りのオーブンの前で。初代勝義さんと二代目の克弥さん

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